CCJJournal

  • Column

2026.03.20

踊りと考えをめぐらせる 第4回 なぜタロットを題材とするのか

踊りと考えをめぐらせる 第4回   なぜタロットを題材とするのか

『TRIANGLE -First Stage-』まで残り1ヶ月となりました。タロットカードを題材とした作品『愚者の旅』もクリエーションは佳境を迎え、今日のリハーサルで作品のラストシーンが完成する予定です。

そもそも、なぜ踊りを創るのか
このタイミングになると、いつも同じことを考えます
「自分は、なぜこの作品をつくり始めたのか」
リハーサルでは、頭の中にあるイメージを具体的な動きにしていきますが、その過程は想定通りには進むわけではありません。ダンサーとともに、その場で生まれたものを取り入れながら即興的に進んでいきます。
そのプロセスの中にいると、そもそもなぜこの作品をつくろうと思ったのかが見えなくなってくることがあります。そのため、最後のピースをはめる前に、一度立ち止まります。
「なぜタロットを題材に選んだのか」
そして、この問いについて考えているといつももう一つの問いが浮かんできます
「そもそも、なぜ踊りを創るのか」
この問いには作品を創るたびに毎回たどり着きます。そして、その答えは少しずつ変化しており、今回、自分の中に出てきたのは、
「何もわからないからこそ、踊りを創る」
という答えでした。
世の中のことも、人のことも、自分のことも、ほとんどわからない。わからないからこそ、知りたいと思ってしまう。
その衝動が、自分にとっての「踊りを創る理由」なのだと思います。

なぜタロットなのか
そこまで考えると、もう一度最初の問いに立ち戻ります。「なぜタロットなのか」
理由はいくつも挙げられますが、一番しっくりくるのは、「タロットには僕が知りたいことのヒントがあると感じたから」です。
タロットには、人や世界について考えさせるイメージが並んでおり、それらを題材に創作することは、人について、世界についてより深く知ることにつながっていると思います。
そして、もう一つの理由は、
「愚者という存在に心惹かれたから」です。
「愚者」とは、何ものにも縛られず、自由で無垢な青年として描かれています。私は「愚者」のことを「愚か者」ではなく、何にも縛られないからこそ「愚かしく見える者」として解釈しています。
自分の関心や好奇心のままに、歩みつづける「愚者」という存在に惹かれたからこそ、『愚者の旅』という作品を作り始めたのだと、立ち返ることができました。

愚者が出会う6枚のカード
今回の作品はタロットカードの大アルカナと呼ばれる22枚のカードを「愚者」が旅のなかでさまざまな出会いや経験を重ねていく物語だという捉え方を元に創作しています。

「愚者」のカードの解釈は、あくまでも僕の捉え方であり、人それぞれの読み取り方があると思いますし、そこがタロットの魅力だと思っています。『愚者の旅』では、愚者は6枚のカードと出会います。

「恋人」「塔」「正義」「悪魔」「星」「月」

それぞれのカードがどんなメッセージを持っているのかの説明はここでは控えたいと思います。
まだタロットに馴染みがないという方は、ぜひタロットの絵柄から何を感じるのかを試していただきたいです。

そして、それらのカードが踊りとなるときに、どんなことが起こるのかをぜひ劇場で体感していただきたいです。

石原一樹

『愚者の旅』に登場する7枚のタロットカード

 

石原 一樹

4歳よりクラシックバレエを始め、2013年より東京バレエ学校Sクラスにて首藤康之、中村恩恵に師事。学習院大学経済学部を卒業後、コンテンポラリーダンスを中心に活動し、鈴木竜、小㞍健太、遠藤康行らの作品に出演。
2018年より振付家として創作活動を開始し、これまでにセッションハウスアワード『ダンス花』(2019年)、『踊る。秋田賞』国内コンペティション(2022年)にてファイナリストに選出される。
現在はCCJ(一般社団法人コレオグラフィックセンター)を拠点に活動し、ダンス公演『月と若者』『ナルシス』『ドリアン・グレイの肖像』などクラシックとコンテンポラリーを往還する作風で新しい作品を生み出す。アーティゾン美術館にて開催された『パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂』の関連イベント『バレエへの誘い』(2022年)や横浜みなとみらいホールで開催された「笹沼樹 チェロ 舞踊と紡ぐ美の世界『捧げし者』」(CCJ主催 2024年)では振付・演出を手掛けている。タロットをモチーフとしたシリーズ〈SOLOS〉では、『愚者』『塔』『正義』をもとに作品を発表。

SHARE