CCJJournal

  • Column

2025.12.25

Between the Lines Vol.2 踊る人のそばで — 芸術家と生きる現場から

Between the Lines Vol.2
踊る人のそばで
芸術家と生きる現場から

CCJは、2026年1月より、舞台芸術に携わる人材のためのキャリア・サポートを本格的にスタートします。

私自身、舞台制作、アーティストのマネジメント、教育の現場という異なる立場を行き来しながら、20年以上、この世界の構造そのものを見続けてきました。舞台芸術の世界では、長い時間をかけて、多くの才能ある人材が育まれてきました。一方で、その歩みを支える環境や仕組みは、本質的には大きく変わらないまま、今日まで続いてきたように感じています。

入口は、確かに広がりました。舞台を志す子どもたちは増え、挑戦の機会も以前より多様になっています。しかし、その先に続く現実的なキャリアの道筋、いわば「出口」は、十分に用意されているとは言えません。舞台の現場で、制作の現場で、そしてマネジメントの現場で、そのギャップを何度も目の当たりにしてきました。

ダンサーのキャリアにおいて、時間は常にシビアな要素です。限られた現役期間の中で、「いつ」「どこで」「誰と」出会うかという一つひとつのタイミングが、その後の道筋を大きく左右することも少なくありません。判断が遅れれば、選択肢そのものが消えてしまうこともある。それが、ダンサーという職業の現実です。だからこそ私は、中長期的な視点でキャリアを考えることと同時に、“いま動ける機会”を逃さないことが、同じくらい重要だと考えています。

CCJの『キャリア・サポート』は、CCJと関わる才能豊かな人材を多方面から活かしていくための仕組みとして構想されており、舞台芸術を担う人材が、自らの意思でキャリアを選び取り続けられるよう、その歩みに寄り添うことを目指しています。パラレルキャリアはもちろんのこと、人生の節目におけるキャリア・トランジションも視野に入れながら、それぞれのフェーズに応じた歩みを、中長期的な視点でバックアップしていく考えです。同時にCCJでは、必要なタイミングで、必要な場所へと速やかに接続していくことを、キャリア・サポートの重要な役割のひとつと捉えています。状況が整ったときに、次の現場へと自然につながるよう、即応性を持ったジョブマッチングを行うこと。それは、短いダンサー人生において、選択肢を現実のものにするための、極めて実務的な支援です。こうした考え方を具体的な形にしていく上で、株式会社コスモスとの出会いは、必然的なものだったと感じています。

株式会社コスモスの代表取締役社長・田部正美さん、取締役の柴田美保子さんをはじめとするスタッフの方々は、ダンサーの置かれている状況や、時間軸のシビアさに対して、非常に丁寧で現実的な理解を示してくださいました。形式的な制度や理想論ではなく、「いま動けるか」「次につながるか」という視点を共有できたことに、強い信頼を感じています。

ダンサーのキャリアは短く、タイミングが結果を左右する職業です。だからこそ、この取り組みは、時間をかけて整える構想ではなく、即応性を持って実装していくプロジェクトであるべきだと考えています。株式会社コスモスとともに、現場で結果を出すことを前提とした仕組みとして、このキャリア・サポートを育てていきたいと思います。

この取り組みは、CCJだけで完結するものではありません。舞台芸術に関わる一人ひとりが、それぞれの立場から知恵や経験を持ち寄ることで、初めて持続的な仕組みとして育っていくものだと考えています。
ダンサー、指導者、制作者、教育機関、企業─立場は違っても、舞台芸術の未来を思う気持ちは共通しているはずです。この企画が、その思いを共有し、業界全体で支え合うためのひとつの土台となることを願っています。

キャリアは、理念で救われるものではありません。選択肢と、タイミングと、現実的な判断によって、初めて前に進んでいくものだと考えています。ただ、ダンサー自身が、自分のキャリアと真摯に向き合い続けられるように。そして、もしダンサーとしてのキャリアを終えるときが来たとしても、その歩みを誇りとして、次のステージへ進めるように。

舞台芸術を志すことが、未来にわたって選択肢として成立するために。
CCJは、その過程に、静かに、しかし確実に伴走していきたいと考えています。

 

 

中沢恭子(なかざわ きょうこ)
CCJ(一般社団法人コレオグラフィックセンター)代表
東京生まれ。国立音楽大学を卒業後、公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)にて、オペラ・バレエ・オーケストラを含む舞台芸術全般にわたり、主要海外オペラハウスの招聘公演に携わる。あわせて、同財団が運営する東京バレエ団および附属バレエ学校のマネジメントを担当。その後、株式会社サヤテイ代表として、首藤康之、中村恩恵をはじめとする第一線の舞踊家のマネジメント、公演企画・プロデュース、キャスティングを手がける。アーティストが創作に集中できる環境づくりを軸に活動し、プロデュースしたアーティストが紫綬褒章や文部科学大臣賞を受賞するなど、その取り組みは舞踊界の発展にも結実している。アーティスト一人ひとりの人生に寄り添う現場経験から、舞踊を取り巻く構造そのものへの問いを深め、一般社団法人コレオグラフィックセンター(CCJ)を設立。
現在は代表理事として、舞台制作・教育・キャリア支援を横断するプラットフォームを拠点に、次世代のダンサーと観客をつなぐ新しい舞台芸術のあり方を探求している。

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