2025年9月11日(木)~15日(月・祝)、東京二期会が東京文化会館大ホールにて、リヒャルト・ワーグナー作曲のオペラ『さまよえるオランダ人』のワールドプレミエ(新制作世界初演)を上演する。監督や装置・衣裳・照明・映像、出演者に至るまで「オールジャパン」で挑む作品だ。
この公演は「Tokyo Opera Days 2025」の旗艦事業として東京二期会が行う「オールジャパン体制」で上演するもので。演出は映画・舞台・映像をなど多方面で活躍する深作健太。映画『バトル・ロワイアルII 【鎮魂歌】』、オペラでは東京二期会とともに『ローエングリン』(2018年2月)、『フィデリオ』(2020年9月)を手掛けている。
指揮は欧州を拠点に活躍し、日本では今回がワーグナー・オペラ初披露となる上岡敏之だ。
そして、装置・衣裳・照明・映像の各分野においても世界に誇る日本のクリエイターが参加。舞台装置に建築出身の久保田悠人、衣裳は映画 『 鋼の錬金術師 』 、 新国立劇場 バレエ石井竜一演出 『 シルヴィア 』などを手掛けた西原梨恵、照明にオペラ照明の第一人者・喜多村貴、映像には、『千と千尋の神隠し』舞台版の映像を担当するなど世界的に活躍している栗山聡之を迎える。「現代東京から世界へ発信する総合アート」として、世界を見据える作品を目指す。
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また、このほど発表された深作氏によるコンセプトの起源はドイツロマン派の画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画『氷海』。ワーグナーが『さまよえるオランダ人』を作曲したのと同じ19世紀初めに描かれたものだ。この時代はフランス革命からナポレオン体制を経て疲れ果てたヨーロッパが保守反動に移行し、「ロマン主義」が求められた時代だ。同じくフリードリヒが描いた『雲海上の旅人』もまた、この時代のロマン主義が有する、現実逃避的な意味合いを象徴するインスピレーションの源の一つとなっているという。
深作氏はそこにさらに当時盛んだった北極航路探索ブームの要素を取り入れ創作されたメアリー・シェリーの怪奇小説『フランケンシュタイン』からも愛を求める怪物としてのオランダ人のイメージを膨らませ、そしてワーグナー自身がロンドンに向かう船が遭難しノルウェーに流れ着いたという北の海での遭難体験も加味。そのうえで「ワーグナーの時代から続く『北の思想』が、今の私たちにどんな「救済」をもたらすのかを考えている」と語っている。
オールジャパンの『さまよえるオランダ人』、全貌が明らかになるその日が待たれる。
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《上岡敏之×東京二期会プロジェクトII》東京二期会オペラ劇場<ワールドプレミエ>
ワーグナー『さまよえるオランダ人』
オペラ全3幕 日本語&英語字幕付き原語(ドイツ語)上演
会場:東京文化会館大ホール
日程:2025年9月11日(木) 18:00、9月13日(土)・14日(日)・15日(月・祝) 14:00
指揮:上岡敏之
演出:深作健太
装置:久保田悠人
衣裳:西原梨恵
照明:喜多村貴
合唱指揮:三澤洋史
演出助手:太田麻衣子
舞台監督:八木清市
公演監督:大野徹也
公演監督補:佐々木典子
出演(9月11日・14日/9月13日・15日)
ダーラント:山下浩司/志村文彦
ゼンタ:中江万柚子/鈴木麻里子
エリック:城宏憲/樋口達哉
マリー:花房英里子/川合ひとみ
舵手:濱松孝行/与儀巧
オランダ人:河野鉄平/斉木健詞
合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
公式サイト:https://nikikai.jp/lineup/hollander2025/
コンセプト動画:https://youtu.be/WCSB7JR2IBU
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Art & Travelライター
西尾知子