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2025.08.29

「未完」の美学

「未完」の美学 

“20世紀のバレエの巨匠“といわれるフランスの振付家 モーリス・ベジャール(1927年 – 2007年)。かの『ボレロ』の振付家といえば、その圧倒的な独創性を想像する方も多いのではないでしょうか。

氏は歴史に残る作品を数多く残していますが、中でも1993年に東京バレエ団のために手掛けた『M』は、三島由紀夫をテーマに、三島の人生、思想、作品、美学をコンテンポラリー・バレエとして舞台化された作品で、世界的に注目されました。三島由紀夫生誕100年を迎える今年、再演も予定されています。

当時の公演ポスターデザインを手掛けたのは、三島由紀夫と親交のあった現代アート作家 横尾忠則氏です。

横尾氏は1970年の大阪万博「せんい館」で≪未完の足場≫というインスタレーションを発表。建築現場の足場をそのまま残した大胆なデザインで大きな話題を呼びました。

大阪・関西万博が開催されている今年(2025年)、時空を超えて銀座と瀬戸内で≪未完の足場≫のインスタレーションがよみがえりました。これはかねてから横尾氏と関係の深いグッチの協力によるもので、東京では銀座にあるグッチ銀座 ギャラリーで。そして瀬戸内では、現在、瀬戸内国際芸術祭が開催されている香川県の豊島(てしま)で公開され、圧倒的な存在感を放っています。

一つの完成形に留まることなく、変容と深化をし続ける「未完」にこそ横尾氏の美学があるのかもしれません。


グッチ銀座 ギャラリーで開催中の「横尾忠則 未完の自画像 – 私への旅」。この夏描いたばかりの最新作を含め約30点が並ぶ。



横尾忠則≪I HAVE NO TIME TO LEFT≫1994-2013年
生前に三島由紀夫がよく口にしていた言葉をモチーフにした作品。

 


屋上には55年ぶりに再現された≪未完の足場≫のインスタレーション。
中央には「原子宇宙」(レプリカ)。2000年に横尾が手掛け、現在豊島横尾館に展示されている作品のイメージが含まれている。

 


Courtesy of Gucci
瀬戸内の豊島では、アートウォール ≪未完の足場≫が公開されている。

 

豊島の海岸から望む風景。
銀座と瀬戸内、一連の作品を通じて、55年の時と場所を超えた壮大な“旅”を感じることができる。

横尾忠則 未完の自画像 – 私への旅」
開催場所:グッチ銀座 ギャラリー(東京都中央区銀座4-4-10 グッチ銀座 7階)
会期:~2025年11月9日(日)(会期中無休)※会期延長
営業時間:11:00 – 20:00(最終入場 19:30)
入場:無料・予約不要
URL:https://www.gucci.com/jp/ja/nst/gucci-ginza-gallery

横尾忠則 新作インスタレーション≪未完の足場≫
開催場所:香川県小豆郡土庄町豊島家浦889(家浦港より徒歩約3分)
会期:~2025年11月初旬

CCJプロモーションディレクター
占部隆子

アール・ドゥ・ヴィーヴル(Art de Vivre)― 美しく、よく生きるために

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