CCJJournal

2025.07.02

JACK in the BOXという試み

JACK in the BOXという試みに、私は写真家として参加しました。
写真家がダンサーとどう関わるのか、少し不思議に思われた方もいるかもしれません。舞台上で写真を撮るパフォーマンスをするのかと想像されたかもしれませんが、残念ながらそれは違います。私の関わり方は、「一輪の花を、びっくり箱に収める」というものでした。
ある日、公園を歩いていたとき、ふと花の香りがしました。私は持っていたカメラでその花を撮りました。花は暗い箱の中に閉じ込められ、現像とプリントの過程を経て、再び姿を現しました。私はその花を、JACK in the BOXの箱の中へとそっと収めました。
その花が咲いていたのは4月。もうそこにはありませんが、出会ったときの香りや光、風の感触が、そこに残っているように感じています。
私が伝えたかったのは、「出会いの美しさ」です。偶然の中でふと訪れる一瞬の輝き。JACK in the BOXが大切にする衝動や未完成さと、私のまなざしはどこか響き合っていたように思います。
舞台も記録も、異なる形式でありながら、どちらも「見る者の感覚を開く装置」なのだと思います。私は完成品ではなく、ひとつの美しさをそっと預けたつもりです。それが誰かの心に触れていたなら、表現としてこれ以上の喜びはありません。

いわさき ゆうた

 

 

写真家
いわさきゆうた


©︎Kanoko.A

埼玉県生まれ。東京都在住。東京農業大学卒業。201 3年より独学で写真制作を開始し、201 5年からは水谷幹治主宰のワークショップに参加。現在、Webエンジニアとしてデジタル技術によるシステム開発やウェブサイト制作に携わる一方で、アナログ写真ならではの物質性と表現の可能性を探求している。

グループ展『いちアートセレクションʼ25』
会期:2025 年 6 ⽉ 17 ⽇(⽕)−7 ⽉ 8 ⽇(⽕) ※⼟⽇は 7 ⽉ 5 ⽇(⼟)のみオープン
会場:いちアートギャラリー(いちアート株式会社内)東京都港区西麻布3丁目24−20 霞町テラス 3階

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